義村一仁追悼特集

義村一仁君追悼特集に寄せて

2018.09.03

越 智   貢(広島大学教授)

 

今号のハビトゥスは、義村一仁くんの記憶を私たちの中にとどめるために編まれました。

義村くんは学部生として4年間、修士課程の大学院生として3年間、私たちの倫理学教室に所属し、そして昨年の3月7日に、突然、若くして逝ってしまいました。訃報はちょうど私の出張中に届きましたが、ただただ驚くばかりで、にわかに信じることができなかったことをいまでもよく覚えています。

義村くんは学部生のときから、ヒュームの倫理思想に深い関心を持ち、卒業論文と同様、修士論文でも『人間本性論』を取り上げて、日々このテキストと格闘していました。その成果を論文として結実させようとしていた矢先の訃報でした。

後に義村くんのご両親から、倫理学教室に100万円の寄付をしたいとの申し出をいただきました。その折、ご両親は、義村くんがいかに倫理学教室とそこに集う人々を愛していたかを語られました。寄付金は義村くんのそうした思いを形にするものだというご趣旨でした。ご両親のお気持ちに報いるため、教室スタッフは、時間をかけて、寄付金の使途を模索しました。

最終的にたどり着いたのは、卒業生全員に贈る記念品と倫理学教室の机や椅子の購入費です。今後何年か、卒業生および修了生全員にガラス製の記念品(ペーパーウェイト)が贈られることになりますが、このプレートの中には実は義村くんの名前も刻まれています。学部生、大学院生の皆さんには、研究への熱い思いを携えながら亡くなった倫理学教室の若い仲間とともに倫理学教室から巣立ってほしいと願っています。そして新しい机と椅子の購入は、もし義村くんがいまでも教室で研究を続けているとすれば、おそらく一番喜んでくれるにちがいないと思うからです。新しい椅子に座り、新しい机を前にするとき、かつて机を並べた義村くんの姿に思いを馳せていただければ幸いです。

倫理学教室の皆さんとともに、改めて義村くんのご冥福をお祈りしたいと思います。


義村さんの寄付による寄贈品
(左:卒業記念品のペーパーウェイト 右:研究室の机と椅子)

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