義村一仁追悼特集

視覚障がい者のための外出支援システム‐ITを駆使して視覚情報を音声情報へ変換

2018.09.03

義 村 一 仁
広島大学大学院文学研究科博士課程前期 思想文化学分野 倫理学専攻

1.視覚障がい者の数(2010年のWHOの推計)

日本…約33万人(弱視・全盲合計)
世界…約2億8500万人(弱視・全盲合計)
※先天性・中途障碍・高齢期に多い糖尿病網膜症・緑内障等様々な原因がある。

2.視覚障がい者にとって不便なこと(一例)

移動、操作能力の制限。特に深刻なのは単独での外出。
現時点での解決策…白杖・盲導犬・点字ブロック・ガイド付き信号・ガイドヘルパー等。
問題点…日常的に使っているルートは問題なく移動できるが、初めての場所は困難。また、歩き慣れたルートであっても、点字ブロック上に物が置いてある、道路工事で規制がある等、通常とは異なる状況の場合は困難である。
その他、人ごみの中での歩行、電車・バスの利用(時刻表や行き先表示、座席番号の確認)等、数え上げたらきりがない。多くの人はこのような理由で外出に消極的になっているのが現状である。

3.盲導犬の役割と限界(盲導犬の貢献を尊重した上で)

 盲導犬の使用者は、歩行の際、盲導犬を通して周囲の状況を判断している。その上で、自身が記憶している地図に照らし合わせながら、盲導犬に指示を出して歩いているのである。

 盲導犬の訓練は、熟練者が時間をかけて行わなければならず、数が限られる。日本の視覚障がい者、約 33万人に対して、盲導犬使用者数は1039人、申し込みから手元に届くまでには約1年を要している。(2013年3月末現在・関西盲導犬協会資料)

4.提案事項…盲導犬に代わる外出支援システム

 帽子に取り付けた小型カメラ等で、周辺の状況を取り込み、心臓部となるコンピューターに送る。コンピューターは、その情報(画像)を瞬時に音声に変換して出力する。

 使用者は、その音声で周辺状況を知ることができ、安全且つ自由に歩行することができる。ナビゲーション機能を、本システムに組み込むことにより、使用者の行動範囲は飛躍的に拡大する。

 更に、画像として取り込まれた文字が音声化されることにより、電車・バスの時刻表、行き先表示、レストランのメニュー等が不自由なく確認できる。多くの視覚障碍者に、新たな可能性を提供するものと確信する。

5.視覚障碍者の外出支援システムの今後

 技術的には車の自動運転装置等が完成の域に達しており、その応用・小型化の実現性は時期は非常に速いと思われる。IT企業、自動車会社、家電メーカー視覚障がい者のための外出支援システム等の垣根を超えた技術力の結集で、全世界の視覚障碍者に光があたることになる。

外出支援システム略図

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